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大塚英志「キャラクター小説の作り方」の本を再読して時代の流れを感じた

この正月に、実家で学生時代に買った大塚英志「キャラクター小説の作り方」を見つけたので再読した。

この本は数ある小説の書き方の入門書という体で、主にキャラクター造形というところにフォーカスしている。 (同じ著者のストーリー造形にフォーカスしたものに、「物語の体操」がある。)

けれど、話は結構横道に逸れて、著者の編集者や漫画編集者としてのエピソードが混じっていたり、 角川書店の編集者への嫌味がかなり長く書かれていたりする。 果ては、戦争をどう描くかについて一章が割かれ、戦争を記号的に描く事を批判して右傾化に危機感を表明するなど、 大塚英志氏のリベラル思想家としてのポジショントークも混ざっているように思える(これは僕の解釈)。 (この本の刊行時は小林よしのりの「戦争論」からまだ5年。ネット右翼という言葉も確かまだなかった)

多分、みっちり小説の書き方を学びたい人にとっては、参考になる箇所も多いもののイライラするかもしれない。 どちらかというと、大塚英志の文学論・サブカル論としての側面が目立つ。

サブカルに興味があって少し昔のサブカル界隈の空気を知りたい場合には凄く面白い。

まずライトノベルという言葉が一度も使われていないのに時代の流れを感じた。 明らかに、ライトノベルの事を指している小説ジャンルの事を「スニーカー文庫のような小説」という書き方がされている。 また今ほどライトノベルが市民権を得ていなかった事も、文章の節々から感じられる。 (当時、既にライトノベルという言葉はあったが、今ほどには浸透しておらず、ジュブナイルとかヤングアダルトという表現も使われていた。)

他にもデ・ジ・キャラットとか木更津キャッツアイとか清涼院流水のJDCシリーズなど、懐かしい単語が出てきたり、 初期のジュブナイル小説について、新井素子折原みとの名前も登場する。 私小説との関わりについての考察も興味深い。

僕はこの本で新たに興味を持った小説や漫画作品は数多いしTRPGはこの本で初めて知った。 今思えばこの本をキッカケに、趣味の幅が広がったと思う。

年月が過ぎるのは速く2000年ごろもつい最近のような気がしてしまうが、 この本を再読してこの頃から随分時間が経った様な気持ちになった。

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

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