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「専門用語をなるべく使わない説明」の弊害

「専門用語をなるべく使わずに平易な言葉で分かりやすく説明する」事の弊害について考えます。

「専門用語を使わない」のではなく「専門用語を示した上で、平易な言葉で分かりやすく説明し、専門用語と専門用語が意味する内容を正しく対応づける」のが大事だと思います。

専門用語を排除する事による弊害は応用範囲が極端に狭くなる事です。

より深い知識を得るために、中上級者向けの書籍を読んだり専門家の話を聞いたりする際に、専門用語は必ず出てきます。そこで知らない言葉が出てくると何も得る事ができません。

また、実用の場で専門用語が扱えないと、もってまわった表現や曖昧な表現を使うしかなく、時間がかかったり誤って伝わったりします

例えば、関係データベースの正規化についての説明をする際には、以下の様にすべきだと思います。

「全ての属性がスカラ値であるとき、その関係は第一正規形であるといいます。スカラ値とは◯◯のようなものです。例えばウンタラカンタラ〜。第二正規形では、主キーの一部から非主キー属性への関数従属性を排除します。関数従属性とはウンタラカンタラ。第三正規形では推移的な関数従属を排除します。どういう事かというとウンタラカンタラ」

上記の説明がわかりやすいかはともかく、スカラ値とか関数従属性とかいった重要な用語を説明から排除してはいけないと思います。

これを以下の様に、 「まず第一正規形では繰り返し出てくる項目を分けます。例えばこんな感じです(例示)。第二正規形では主キーの一部からキーじゃない項目が決まるような事がないようにします。例えばこんな感じです(例示)。第三正規形ではキーじゃない項目からキーじゃない項目が決まる事がないようにします。例えばこんな感じです(例示)。」 とだけ説明してしまうと、応用がききません。

他の資料を読んだ際に、スカラ値や関数従属という言葉が説明なしに出てきた時点で読み進める事ができなくなるのは学習において非効率です。

実務においても、 「なんかこのカラムのデータの持ち方変じゃないです?普通こういうやり方しないですよね?」 と言うよりも 「このカラムのデータはスカラ値になってないですが、何か意図はあるのですか?」 と言う方がコミュニケーションがスムーズです。

以上のように、専門用語を使わない(ひいては厳密な定義が示されない)説明の弊害について考えました。

では、専門用語を排した説明は「百害あって一利なし」かというと必ずしもそうではないと思います。

「ひとまず手を動かす事」が最優先の場合は、あえて「分かった気になる」事も大事かもしれません。 新しい趣味を始めるときや仕事の都合で短期間で一通りの知識を得る必要があるときにおいては、専門用語の厳密な定義にこだわっているとなかなか前に進めません。 とりあえずやってみるのだと割りきって専門用語の学習を後回しにしても良いと思います。

このような場合でもある程度慣れてくると、応用範囲が広がって知識を体系化する必要に迫られます。 そのときは「分かった気になっている」状態を卒業して、専門用語と我流の感覚的な理解とをマッピングする作業になります。